2つのテコンドー団体ITFとWTについて

習っている人も意外と知らないテコンドーの歴史(誕生から2024年現在までの簡単な流れ)

※この記事の内容は歴史問題と同じく、異なる解釈や見解、認識があるため、部分的な引用や、炎上しそうな所へのシェア、思想的なこだわりが強い方へ話題とすることを避けていただくようお願いします。m(__)m

 また当サイトが望むのは対立ではなく融和であることも最初に明言させていただきます。

 

 

 

テコンドーは朝鮮半島に伝わる古武術(テコンドーが蹴り技中心なのはテッキョンの影響)と空手(主に松濤館空手)の技術が融合して誕生しました。

 

創始者についてはチェ・ホンヒ(崔・泓熙)氏とウィキペディアにも書かれており、当時韓国陸軍将軍である故チェ・ホンヒ氏がテコンドー創設に向けて主導的な役割を果たし『テコンドー』という名称を決定したのは事実です。

 

 

しかし、当時の韓国には韓国古武術、日本空手(松濤館空手など)、満州中国拳法などを学んだ韓国武術家達が武道(韓国空手)を教える伝統5大道場が存在しており、韓国空手にこだわりを持っていた指導者達は、テコンドーへの名称変更にも反発していました。

 

その後、若い世代の指導者達の中でチェ・ホンヒ氏のように韓国民族武道としてのテコンドーを創りたいという想いを持つ者達が増え、伝統5大道場が協力してテコンドーが名前だけでなく具体的に創られて進化してきたという流れがあります。

 

 

 

さらには朝鮮半島が北朝鮮と韓国に分断された際、チェ・ホンヒ氏がカナダに亡命したことにより、テコンドーも2つの団体に分かれ、その考え方、技術体系、術理、ルールまで全て異なり別の武道ともいえるぐらいの違いのある2つのテコンドーがそれぞれ進化、発展しています。

 

その2つの団体がこそがITF(北朝鮮)とWT(韓国)です。

 

 

 

そしてITFはテコンドーの名称を決めたチェ・ホンヒ氏こそがテコンドーの創始者であり正統テコンドーであるという主張をし、WT(韓国)は当時の歴史や流れからそれに異を唱えることになります。

(個人的には”正統”という単語を使用すると自分達以外は正統でないと主張することになるのでお互いが正統を主張し合い争いになり、その解決が難しくなると思います。

これは現代の戦争や紛争でも同じで、それぞれが正義、自分達が正しいと主張することで争いが生まれています。)

 

ということで、このテコンドーの創始者が誰なのか、またどちらが正統なのか、という話題はデリケートで争いの元になりかねないので避けた方が良いことをご留意ください。

 

 

 

 

ここで、チェ・ホンヒ氏はカナダに亡命したのに、なぜ一般的にはITFが北朝鮮と言われるのかについて補足説明していきます。

 

チェ・ホンヒ氏はカナダでITFテコンドーの普及活動に努めるのですが、その過程で西洋商業主義的なテコンドー指導者、道場も増えてきてしまい、それを良しとしないことから、新たな指導者を育て、技術を発展させる場所を北朝鮮とすることを決意し活動してきました。

 

この活動の結果、チェ・ホンヒ氏の思想を理解し受け継ぐ指導者が誕生していきます。

 

そして北朝鮮は、チェ・ホンヒ氏の思想を正しく受け継いでいるのは自分達である、と北朝鮮がITFテコンドーの宗主国を名乗っています。(※現在はITFテコンドーは分裂していることもあり、この辺の見解もそれぞれ異なります。)

 

 

 

ただ、こうした思想の違いと活動、後継者をギリギリまで決めず、遺言状には疑義があるとして、チェ・ホンヒ氏の亡き後には、実子と高弟との間で分裂が起き後継者争いが勃発します。

 

この後継者争いは誰が正統なのか、というだけでなく現実的な利権問題(受講料だけでなく昇段審査代やセミナー開催による収益も大きい)も絡むため、解決が難しく、ITFテコンドーは3つの団体(北朝鮮派、カナダ派、ユーロ派)に分かれてしまいました。(現在ではさらに細かく分かれています。)

 

そしてその影響は日本国内のITFテコンドー道場にも及び、その思想や人間関係を含め分裂が起こっています。(繰り返しになりますが、同じ団体でも分裂するぐらいですのでこれは非常にデリケートな問題で深入りを避けた方が良い内容です。)

 

 

 

なお、韓国ではこういった分裂や争いを防ぐために、国技テコンドーについては国が法令で定め、利権につながる段位の認定発行も国家機関である国技院が全世界共通で一元的に管理しています。

 

 

 

またこれもデリケートな話ですが、北朝鮮本国ではITFテコンドーが学校体育に取り入れられ、日本の朝鮮学校でも部活などで指導されるのはITFテコンドーであることから、在日朝鮮人はWTテコンドーを選ぶことはまずなくITFテコンドーを選択します。

 

それに対して、WTテコンドーは韓国の国技で本部も韓国にあり、在日韓国人とのつながりが強くなります。

 

そして朝鮮半島南北分断の影響は日本国内の在日朝鮮人、在日韓国人の間でも存在し、日本国内のWTテコンドー道場内で在日朝鮮人を見かけることは今まではまずなかったと思います。

 

 

 

ということで、テコンドーは大きく分けてITFテコンドーとWTテコンドーの2つに分けることができるわけですが、この2つのテコンドーは道着、技の名称、技のフォーム、体の使い方、競技ルール、昇級昇段システムまで全て異なります。

 

ただ日本ではテコンドー自体がマイナーですし、こういったテコンドーの歴史や大きく分けて2つの団体ITFとWTがあることも、その違いも知らない方がほとんどだと思います。

 

実際、習っている方でも、ご自身がどちらのテコンドーをしているのか、どの団体に所属しているのかについては気にすることもなく知らないことがけっこうあります。

 

 

 

ちなみにITFテコンドーとWTテコンドーの分かりやすい見分け方としては道着だと思います。

 

道着の背中に大きくアーチ状にTAEKWONDO、縦に태권도と書かれていたらITF系の道場です。

  

 

WTの道着は背中は基本何も書かれておらず、道場によっては道場名をプリントしています。

 

 

 

これから何か武道か格闘技を習おうと思って道場を検索したり探す方で、最初からWTテコンドー、またはITFテコンドーとこだわりを持たれている方はほとんどいらっしゃらないと思います。

 

2つのテコンドーには、それぞれに良さがあるのですが、韓国の国技であり、韓流スター達が特技とし、オリンピックの正式種目(2000年シドニーオリンピックから)に採用されているのは韓国式であるWTテコンドーの方です。

 

WTテコンドーはさらに2020年のパラリンピック東京大会でも22ある競技の1つに正式採用されています。

 

 

 

あと、さきほど日本ではマイナーと書きましたが、韓国に本部があるWT(=World Taekwondo・ワールドテコンドー、旧称World Taekwondo Federation・世界テコンドー連盟)には200カ国以上が加盟し、競技人口は7000万人を超える団体となっています。

 

そしてアメリカや中国、アジアの国々では、テコンドーは空手と並ぶ人気だったりします。

 

 

 

昔は日本では嫌韓の雰囲気もあったり、テコンドーは空手のパクりだというネガティブな声もありました。

  

しかし今ではK-POPや韓国ドラマなど韓流ブームで韓国のイメージも上がり、韓国エンターテインメントの人気は世界規模で広がっています。

 

 

 

伝統空手の試合でも海外選手がテコンドーの足技を取り入れ良い成果を上げていることから、日本の空手道場でもテコンドーの蹴り技や組手技術を取り入れたり、テコンドーとの掛け持ちを勧めているところも増えてきています。

 

またフルコン空手の大会でも、子どもや女性の間では現代オリンピックテコンドーのような片脚を上げて戦うスタイル、通称”ケンケン”、”ケンケン殺法”が取り入れられたりしています。

 

 

 

このようにもともとは松濤館空手の技術がベースとして韓国で誕生したテコンドーが発展し、今度はその技術が空手にもたらされているのを見ますと、テコンドーと空手は対立関係ではなく相互協力関係にあると解釈することもできます。

 

また日本でフルコン空手の礎を築いた極真空手創始者である故・大山(崔)倍達氏と故チェ・ホンヒ氏は義兄弟の契りを交わしていましたし、団体や組織、利権などを抜きにして考えると空手とテコンドーは兄弟武道として考えても良いような気がします。

 

 

 

最後、余談ですが、日本でも人気の韓国LINE漫画『喧嘩独学』に登場する新庄玲央はWTテコンドーがメインですが、ITFテコンドーの技術も後に身に着けていますし、その父親はWTテコンドー、ITFテコンドー、極真空手の3つをマスターしているテコンドーの伝説として描写されています。

 

実際、リアルの世界でも、WTテコンドーとITFテコンドーの両方の段位を持つ指導員もいらっしゃいますし、さらに空手の技術や型を学ぶ方もいらっしゃいます。

 

今の時代は、YOUTUBEを見ても、日本では異なる武道や武道家がコラボするのは普通になっていますし、対立ではなく仲良く協力していく流れが進んでいくように思います。^^

 

 

 

 

 

追伸

これはこれからテコンドーを習おうと検討されていらっしゃる方への現実的な情報ですが、WTテコンドーは一般的に普及を優先しているため、ITFテコンドーより月謝額が安く設定されていることが多いのも特徴です。

道着の値段も半額ぐらい差があることもありますし、昇級審査や昇段審査の費用もITFテコンドーより安く設定されています。特に昇段審査費用は万の単位で違いがあります。